吸血鬼(1931・独=仏/ユーロスペース)製作・監督・脚本:カール・ドライヤー
怒りの日(1943・デンマーク/ユーロスペース)★ヴェネチア映画祭審査員特別表彰
裁かるるジャンヌ(1927・仏/ユーロスペース)監督・脚本:カール・ドライヤー
奇跡(1954・ベルギー=デンマーク/ユーロスペース)★ヴェネチア映画祭金獅子賞
新文芸坐オールナイト『聖なる映画作家 カール・ドライヤー』観てきました~~~
うれすぃ~やっと観たカール・ドライヤー!!!
ゴダールの映画等で、部分的には知っていた『裁かるるジャンヌ』、ずっと観たいと思ってたのですよ。
すごいっす!! ちと興奮さめやらず状態でいまいち眠くない。帰りの電車でも本読んでたし。
しかも今読んでるのが、ミシュレの『魔女』っつーのが、めちゃめちゃグッドタイミングなのでありました!
もう、ミシュレの訴えてる事そのものなんだもん。『怒りの日』と『裁かるるジャンヌ』。
しかし寝ないとな。起きてまた書きます~。日記1日分で書ききれないかもしんない。
☆☆☆★★★☆☆☆夕方まで寝てもーた・・・
※ネタバレありです※★吸血鬼★
サイレントからトーキーにうつった頃って、サイレント時代のような字幕を使うのがよくありますが、これもそういう感じ。
んで、その字幕のバックに蜘蛛の巣をあしらっていたりするんです! 十字架だとか、毎回違うものを。あのセンスには唸りました。
本の通りに事が進んでいく恐さ。
昔の吸血鬼映画にある、本当に背筋の寒くなるような恐ろしさと、観ているこっちが「あー早くしないと!」とはやる気持ちになってしまう所が、この作品にもありました。これが吸血鬼映画の面白い所!
幽体離脱とかもあって、おもしろかった~。
主役のジュリアン・ウェスト (ニコラ・ドゥ・グンツブルグ) はなんかサイレントかなんかで見た事ある気がするんだが…あのギョロ目に見覚えがあるよーな。出てないっすか?
ジセール役のレナ・マンデルの綺麗な事! 彼女のセリフは実に音楽的で、歌うようにしゃべってました。
そしてカメラワークの見事な事!
棺桶の中から見ている様なカメラワークなどなど。
ゴダールは、ドライヤーを、グリフィスやラングやホークスと並ぶ偉大な映画作家と見なしていると言うけど、まさにその通り! しかし、それよりも、私は
エイゼンシュテイン
と並び称したいと思います。
芸術的な映画作品は、退屈な場面もあったりする事が多いのですが、この『吸血鬼』は退屈な所など一切なく、おもしろく観ました。
これ観終わって、即プログラム買っちゃいました。全作品出ていて1500円。
★怒りの日★
中世には魔女狩りがあり、魔女と言われたら最後、想像を絶する拷問にかけられ、火刑に処された話は有名ですが、これが映像として迫ってくると、本当にこんな事が行なわれていたんだよな、と恐ろしくなります。(拷問そのものの映像はなかったんですが…) 人間って恐ろしい・・・
そして、笑いながら拷問を楽しんでいたヤツ等、こいつらは聖職者なんですよね。
ドライヤーの『怒りの日』は事実に基づいてつくられています。
子供程も年の離れた奥さんを娶り(息子よりも年下なんですぜ) この奥さんの母親は見逃したくせに、魔女マテを助けず、魂の救済だとか何とかばかりほざいている牧師アプサロンは、偽善者の極地とゆー感じではっ倒したくなります。
そして、このアプサロンの感情、アプサロンの母親、息子、奥さんの感情の変化が実によく伝わってくる。
表情がどの俳優もすごくうまいんです。
だからすごくリアル。
そーゆー事だけでなく、実に深い映画です。魔女狩りの事、人間の感情の事、人間の中に潜む<悪>の事、心の光と影の事などなど考えさせられます。
★裁かるるジャンヌ★
音楽なしのサイレントで、放映前に、御飲食等つつしんで周りのお客さんに御配慮を、とのアナウンス。いやー緊張しちゃいますね。ちょっとした音をたてただけでも結構目立っちゃいますから。
「『裁かるるジャンヌ』は、すべての俳優にメイクなしで演じさせることに成功した (おそらく映画史上初の) 映画だ」
とドライヤーは言ってますが、スゴイ!
夜中のいちばん眠い時間、くいいる様に観てしまいました。
クローズアップのすごい事!
天才的カメラワークは、この作品で頂点に達するよーな…
顔の部分的なアップなどなど、すごいんです、ほんと。
ジャンヌ役のルネ・ファルコネッティはほんとに美しい。
細かい表情の変化、この演技に圧倒されます。
この作品は、実際のジャンヌ・ダルク裁判そのものを忠実に再現しているそうです。ただ、この裁判を1日の間に行なわれているかのように描いていて、それにより、不必要な要素が省かれ、緊迫した雰囲気になっています。
ジャンヌの美しさと、フランスを助けた英雄を苦しめ楽しむ聖職者達の醜さが、実に見事にクローズアップによって対比しています。
神の事を語るジャンヌの表情を見ていると、「神に恋している」ような印象を受けました。
サイレント映画なので、今迄様々な音楽がつけられて放映されたそうですが、ドライヤー自身が指示した音楽はないらしく、私も音楽なしが一番正しい観方だと思いました。
★奇跡★
最初はニーチェ的なような、ドストエフスキーなような感じかな、と思って観ていました。
ドライヤー映画の全般的に、ニーチェ的なテーマがあるような気がします。
キリストと言うよりクリスチャン批判、教会批判が見てとれるからです。
信仰が薄くても、信仰がなくても善良な人達。彼等までも地獄に落ちるのが正しいと思っているキリスト信者。
この事は私も昔から考えている事でした。
キリスト信者の残酷さがすごく表れていて、信者でない、しかし心の清い人達が被る理不尽。苦しみ。ちとうるうるしながら観てたですよ。
それと、この作品、ユーモアのセンスもあるんです! 誰も笑っていなかったんだけど…ここ笑う場面でしょ?てのがちらほらと…
しかし、ラストがなあ・・・有り得ない事ではないのだけど。ポーの「早すぎた埋葬」の現象だとすれば。
だけどなあ…ちと納得いかんラストでした。
・・・と順番に書きましたが、ドライヤー映画は、語れば語る程陳腐な表現になってしまって、自分で嫌んなっちゃいますね。
ぜんぜんこの凄さが表現できてない気がします。
クリックよろぴくー。

テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画